大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

釧路家庭裁判所 昭和31年(少イ)7号 判決

被告人 西嶋ミヨ子

主文

一、被告人を罰金壱万五千円に処する。

右罰金を完納できないときは金参百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

一、訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となる事実)

被告人は川上郡標茶町旭町に於て、カフヱーチヱリーを経営しており満十八才にならないB子(昭和一四年三月三一日生)を女給として雇入れたが、過失により同女の年齢を確認しないで昭和三一年四月下旬頃から同年六月上旬頃迄の間に二名位の嫖客に売淫をなさしめ、以て児童に淫行をさせたものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公廷における供述

一、B子の戸籍謄本

一、白永基の答申書

一、B子の司法警察員に対する供述調書

一、被告人の検事に対する供述調書

一、右同人の司法警察員に対する供述調書

(適条)

法律に照すと被告人の判示所為は児童福祉法第三四条第一項第六号、第六〇条第一項第三項に該当するので所定刑中罰金刑を選択しその所定金額の範囲内に於て被告人を罰金壱万五千円に処し、若し右罰金を完納できないときは刑法第十八条により金三百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部被告人の負担とする。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は被告人がB子の年齢を知らなかつたことについて過失がなかつたと主張するけれども、被告人の当公廷における供述、証人北川さよ子の当公廷における供述、B子の司法警察員に対する供述調書を綜合考察するとB子が被告人に対しその年齢を二十三才と告げたこと、同女が一見して二十二、三才に見えたこと、本籍を尋ねても北見だとか遠軽だとかと言いはつきりしなかつたこと、親許についても明答を得られなかつたこと、戸籍抄本の取寄を慫慂しても同女は之を取寄せなかつたことが認められる。してみると被告人は単に本人の供述または身体の外観的発育状況のみによつて、同女が満十八才以上に達しているものと判断したに過ぎないもので、更に客観的な資料として戸籍謄抄本、食糧通帳若しくは父兄等について正確な調査をしたと認めらるべき証拠はないから右弁護人の主張は之を採用することができない。

なお弁護人は児童福祉法における児童年齢確認に関する注意義務につき、具体的に公信力ある戸籍謄抄本、食糧通帳等によらなければならないものとすることは一般生活上の条理に反すると主張するが、右は弁護人独自の見解であつて採用できない。

仍て主文の通り判決する。

(裁判官 海野賢三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例